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三味線を速く弾く前に|ゆっくり練習する確認点

三味線の練習で速さを上げる前に、今の速さで何が保てているかを確かめます。最後まで止まらなかっただけでなく、糸と勘所、音の長さ、拍、習った動きがそろっているかを見ます。速くすると崩れる箇所があれば、そこを特定して、確認できる速さへ戻しましょう。

ここで扱うのは、基本の構えと奏法をすでに習った人が、同じ短い課題の練習速度を決める方法です。速弾きのための新しい指使いや撥の動かし方を教える手順ではありません。一定の拍に合わせて練習する箇所を選び、歌や語りの間まで一律に機械の速度へそろえないようにします。

速くしたい箇所を一つに決める

最初に、曲のどの部分で速さが必要なのかを決めます。「曲全体を速く」ではなく、糸を替える一節、同じ動きが続く箇所など、始まりと終わりを示せる範囲にします。譜面の版と位置を控え、使う調子と基音も変えずに比べます。

選ぶのは、ゆっくりなら習った動きで弾ける内容です。常磐津齋櫻氏のメトロノーム練習の説明も、まず自力で楽に弾ける旋律を選び、余裕を持って全体を弾けるようになってから速度を上げる流れです。まだ奏法そのものが分からない課題は、速度より先にその動きを確認します。

同じ曲でも、音を覚える練習と、速度を変えて確かめる練習は区別します。どの糸かを毎回探しているなら、まず読譜を確認します。押さえる位置が分からないなら、その位置を確かめます。速さを下げるだけで解決する問題かどうかを、先に分けておきましょう。

ゆっくりの一回を比較の基準にする

メトロノームを使う場合は、一音のクリックが何拍に当たるかを決めます。設定の数字だけを残すと、後で一拍の数え方を変えたときに比較できません。「四分音符を一拍として、この範囲を弾く」のように、速さと数え方を一組にします。機器の設定方法や拍の練習は、メトロノームの記事で確認できます。

いったん落ち着いて構え、習った入り方で始めます。曲の途中だけを勢いで繰り返せても、最初の音から同じように入れるとは限りません。始める前の準備も含めて、一つの短い演奏として確かめます。

録音を残すなら、比較する短い範囲だけにします。曲と位置、設定した速さ、同じ箇所を弾いたことが分かる名前を付けます。録音の大きさや補正を毎回変えず、速さ以外の違いを増やさないようにしましょう。教師やほかの人の見本を録音する場合は、許可された方法で扱います。

拍に合ったかと音を保てたかを分ける

まず、出す糸や勘所を取り違えていないかを確かめます。次に、決めた拍に対して入りが前へ出る、後ろへ残る箇所を探します。拍には追いついていても、必要な音を抜かしたなら、同じ課題を速く弾けたことにはなりません。

音の長さと休みも残します。二つの音の間を勝手に短くする、休符を詰める、長い音を途中で切ると、手は進んでもフレーズが変わります。速さを上げた後も、どこまで響かせ、どこで休むという譜面と見本の指定を確かめます。

音をつなぐ指定の箇所では、速くした後も習った響きが残っているかを聴きます。津軽三味線の指導者・獅子道氏は、次の音へ移る前に押さえた指を早く離すと、音が切れてつながらない例を挙げています。音を切る指定のある箇所とは分けて確かめましょう。

手元と譜面を見る条件もそろえる

部分練習では手元を見ていたのに、通すと譜面だけを見ていた、という違いもあります。獅子道氏の練習解説は、こうした条件の変化が、部分ではできても全体ではできない場面に関わると説明しています。速度だけを原因と決める前に、見ていた場所や課題の範囲が変わっていないかを振り返ります。

確認のために撮影できる場合は、同じ位置から、楽器と手元が分かる範囲を残します。録画を見ても、隠れた指や接触面までは分かりません。見える範囲で、習った構えからずれる、持ち直す、途中で止まる、といった変化があるかを確かめます。

「速く弾くには指をこの角度にする」と、見本にない動きをその場で足す必要はありません。すでに習った動きが保てないなら、その速さで反復を増やさず、確認できる条件に戻します。新しい動き方が必要かは、対象の先生の実演で確かめましょう。

速度を変えたら同じ範囲で比べ直す

今の速さで音と拍を確認できたら、次に確かめる速さを一つ決め、同じ範囲を弾きます。上げ幅を毎回同じ数値にする必要はありません。指使い、弾く範囲、見本まで同時に変えると、何が違いを生んだか分からなくなるので、まず速度だけを変えます。

速くしたときに三つ目の音で糸を取り違えたなら、さらに速い設定を試す前に、その前後を見直します。元の速さへ戻して同じ場所を弾き、糸の選択が戻るかを確かめます。

短くした範囲が確認できたら、前後をつなぎ、初めに選んだ範囲へ戻します。部分だけを速く弾けたことと、その前から入って後へ進めたことは別に記録します。次の設定へ進むか迷うときは、最高速度より、どの条件なら同じ演奏をやり直せたかを判断材料にしましょう。

記録には数字とできた内容を一緒に残す

記録は「今日の最高値」だけにしません。「この一節は、今の設定なら糸を取り違えず、休みを数えて最初から入り直せた。速くすると最後の休みが短くなった」のように、確かめた内容を添えます。次回は休みを確かめるところから始められます。

設定した速度を記録しても、ほかの人との順位には使いません。曲、拍の単位、必要な奏法が違えば、同じ数字でも課題の難しさは変わります。一日ごとの増加率や、何日で完成するという予定を共通の基準にしないようにします。

最後は、その曲の見本や、先生・共演者との演奏へ戻します。クリックに合ったことだけで、歌や語りとの間、曲の抑揚まで確認できたわけではありません。ゆっくりの練習で何を保てるようになったかを持ち帰り、実際の曲の流れで確かめていきましょう。

参考資料

速度を上げる前提と、確認した箇所を練習し直す流れは、常磐津齋櫻 メトロノームを使っての三味線練習方法を参照しました。

練習条件の違いと録音による振り返りは、獅子道 上達の為の方法。音のつながりの例は、同氏の津軽三味線ワンポイントの説明によります。先生ごとの指導例で、すべての三味線奏法へ共通化していません。