三味線の曲を短く区切って練習するときは、難しい箇所を取り出した後に、前後へ戻して弾くところまでを一組にします。部分だけなら弾けても、前の音から入ると止まる場合があるためです。曲の最初から何度もやり直す前に、どこで迷うかと、その前後の動きを確かめましょう。
ここでは、すでに習っている曲や教材を使い、区切る位置、つなぎ目、範囲の広げ方を決める手順を紹介します。必ず二小節ずつにするなど、すべての曲を同じ長さに切る方法ではありません。譜面のない教材でも、見本音源の開始位置と終わりを目印に使えます。
一節の流れを聴いてから範囲を決める
初めに、今日取り組む一節を見本で聴きます。譜面があるなら対応する場所を追い、音が続くところ、休むところ、似た旋律が戻るところを探しましょう。教材や先生が示した区切りがあれば、それを出発点にします。
譜面の行末やページの終わりは、読み進めるための区切りです。音楽のまとまりがそこで終わるとは限りません。行末から次の行へ音が続くなら、その前後も一緒に確かめます。長い一節を小さくする場合も、どのまとまりから取り出した部分なのかを控えます。
長唄の教材『フレーズで覚える三味線入門』は、旋律の型を手の動きや口三味線とともに学ぶ構成です。小さな単位で取り組むときも、数字の列だけを切り取らず、見本の響きや習った唱え方と対応させる考え方が使えます。唱え方がまだ分からない場合は、自分で口三味線の言葉を作らず、見本の該当箇所を聴き直してください。
止まった位置の少し前から取り出す
一節を弾いて迷ったら、止まった音と、その直前にしていたことを見ます。次の糸が分からないのか、勘所の順序を読み直しているのか、音は分かるが移動が間に合わないのかを分けましょう。原因が分からない場合も、まず止まった位置だけは記録できます。
たとえば糸を替える直後で止まるなら、替えた先の音だけを繰り返すより、前の糸の最後の音から始めてみます。押さえる位置を移した後で迷うなら、移動前の音も含めます。取り出す範囲には、確かめたい動きが始まるところと、次の音へ進むところを入れます。
一音ずつなら読めるのに続けると迷う場合は、まず二つの音をつなぎ、分かったら前後の音を足します。逆に、どの糸や記号かが分からない場合は、速さを落として何度も弾く前に、教材の説明を確かめます。未習の奏法なら、その場所は先生に教わる課題として残しましょう。
二つの部分の境目を八拍の例で確かめる
次は、区切りとつなぎ目の違いを説明するために作った独自の八拍の例です。既存曲の譜面ではありません。二の糸と三の糸の開放弦を、教わった奏法で弾き分けられる人を想定しています。各音も休みも一拍分とし、四拍ずつ数えます。
前半Aは「二の糸、二の糸、二の糸、休み」です。後半Bは「三の糸、三の糸、二の糸、二の糸」とします。ここでのAとBは練習箇所の名前で、調子や音名ではありません。実際の曲を、この音の並びに変えるという意味でもありません。
Aだけを弾いた後、いったん数えるのをやめて楽器を構え直し、Bを弾くことはできます。しかし、その二回だけでは、Aの休みを一拍保ってBの最初へ入れるかは確認していません。Aを弾けること、Bを弾けること、AからBへ進めることを別々に見ます。
つなぎ目では、Aの三拍目からBの二拍目までを取り出します。「二の糸、休み、三の糸、三の糸」の四つです。声で数えるなら「3、4、1、2」とし、4でも数えるのを止めず、次の1で三の糸へ入ります。休みを飛ばさず、余分な待ち時間も足していないかを確かめましょう。
この部分がつながったら、Aの頭からBの終わりまで八拍を通します。つなぎ目だけを弾いたときと、Aの頭から進んだときで違いがあるかを見ます。通すとまた止まる場合は、Aの三拍目より少し前から始めて、範囲を広げ直します。
休みの間の余韻や消音の扱いは、習っている奏法に従います。この例は入る順序と時間を確かめるもので、弦の止め方を教える課題ではありません。糸の弾き分けをまだ習っていない場合は、楽器で試さず、まず声でAからBへの数え方を確かめても構いません。
実際の曲でも前の終わりと次の始まりを重ねる
手元の曲へ戻ったら、二つの区切りの境目に印を付けます。前のまとまりをA、次をBと呼ぶなら、Aの終わりからBの始めにまたがる範囲を別に練習します。ここでの範囲は、二音の場合もあれば、休みを挟んだ少し長い範囲になる場合もあります。
前の音から始めると、手の位置だけでなく、どの音を聴いて次へ入るかも確かめられます。曲中にない長い休みを入れてからBを始めていたなら、まず前後の見本を聴き直します。決められた休みや間と、迷って追加した止まり方を混ぜないようにしましょう。
音楽によっては、唄や語り、相手の合図を受けて入る場所があります。その場合は、一定の拍数だけでつなぎ目を決めず、何を聴いて入るかも先生に確認します。一人で数える課題と、相手と合わせる課題は分けて練習できます。
同じ箇所を繰り返す前に確認点を変えない
繰り返すときは、「Bの最初の糸を迷わず選ぶ」など、その回に確かめる点を決めます。できたかどうかが曖昧なまま回数だけ増やすより、今の試行で何が起きたかを一度確かめましょう。弾く速さを変えたなら、その変更も記録します。
常磐津齋櫻氏の練習解説にも、遅れる部分を調べ、そこを練習してから全体へ戻す流れがあります。この記事では、その考え方を、つなぎ目を含めて範囲を選び直す手順に使っています。一度つながったら同じ条件でもう一度試し、確認したい動きが再現できるかを見ます。全員共通の合格回数は設けません。
何度試しても同じところで迷うときは、確認点を小さくします。音の並びが分からないなら譜面と見本へ、動き方が分からないなら習った説明へ戻ります。強く弾いたり、速さを上げたりして通り抜けようとせず、分からない内容を言葉にしておきます。
似た部分は違う終わり方まで確かめる
同じように聞こえる部分が戻ってくる曲では、最初の数音だけで同じ部分と決めず、終わりと次の入り方を比べます。「前半は同じだが最後の音が違う」「二回目だけ次の節へ進む」など、手元の譜や見本で確かめた違いを目印にしましょう。
暗譜を試す場合も、いつも曲の最初からだけ始めず、決めた区切りから始められるかを確かめられます。途中から始められなければ、その区切りの最初の音や、直前に聞こえる響きを見直します。これは記憶を確認する試し方であり、譜面を見てはいけないという決まりではありません。
最後に広い範囲へ戻して次の出発点を残す
部分とつなぎ目を確かめたら、最初に選んだ一節を通します。全曲が長い場合は、その前後を含むまとまりまでで構いません。冒頭だけを何度も繰り返さず、今日取り出した箇所が流れの中でもつながるかを確認します。
録音を使うなら、同じ範囲と速さで残し、止まった位置を聴き返します。まだ弾けない部分だけでなく、「つなぎ目だけなら進めた」など、確認できた範囲も記録しましょう。
終える前に「次はAの最後からBの二音目まで」のように、再開する位置を残します。区切った部分、境目、広い一節の三つを行き来しながら、どこまでならつながるかを確かめていきましょう。
参考資料
部分を確認して全体へ戻す練習は、常磐津齋櫻 メトロノームを使っての三味線練習方法を参考にしました。八拍の例とA・Bのつなぎ方は、本記事で作成した説明用の課題です。
フレーズと口三味線による教材の構成は、音楽之友社のフレーズで覚える三味線入門の内容紹介と目次で確認できます。曲中の具体的な区切りや奏法は、使っている教材と先生の指示に合わせてください。