三味線のリズムを確かめるときは、拍を数えることと、実際に音を出すことを分けて練習できます。休符で音が止まっても拍は進みます。メトロノームの一定の音を目印にすると、休んだ後にどこから戻るかを確かめられます。
ここでは4分音符を1拍とする、一定の速さの基礎練習を紹介します。手拍子から始め、すでに習った音の出し方へ移す例です。曲の間や唄の呼吸まで等間隔にする練習ではありません。実際の曲へ使うときは、一定の拍で練習する範囲を教材や稽古で確かめましょう。
メトロノームの一音が何を表すか決める
テンポは演奏の速さ、拍子は拍のまとまりです。この二つを分けて設定します。今回の練習は4分の4拍子で、メトロノームが四回鳴ると一小節です。声で「1、2、3、4」と数え、次の小節で1へ戻ります。
テンポの数値は、一分間にいくつの拍を刻むかを示します。ここでは一音を4分音符一つ分に設定し、60なら一秒ごとに一回鳴る速さとして使います。60は設定を確かめる例で、三味線初心者全員に合う速さという意味ではありません。
使う機器やアプリで、テンポ、拍子、細かい刻みの設定を見ます。八分音符などの補助音が鳴る設定なら、最初はそれを外し、四分音符の拍だけが聞こえる状態にすると、声の番号と対応させやすくなります。拍子の先頭だけ音が変わる場合は、その音を1として数えます。
設定したら、すぐに弾き始めず、まず数回聴いて数えてみましょう。四回の音で「1、2、3、4」になるかを確かめます。数が合わないときは、演奏を直す前に、補助音や拍子の設定を見直してください。
先に声を重ねてから手拍子を入れる
メトロノームの各音に合わせて「1、2、3、4」と声を出します。途中で数え直す場合も、機器の速さを追いかけて言葉を詰めず、いったん止め、次のまとまりから入り直しましょう。
声の位置が分かったら、同じ四拍で毎回手を打ちます。鳴った音を聞いてから反応するだけになっていると、手拍子がいつも少し後ろへ続いて聞こえることがあります。次の拍が来る位置を数えながら、クリックと手拍子の出るタイミングを比べます。
声と手を同時に合わせにくい場合は、手を止め、声だけへ戻ります。今回確かめるのは、どの拍に入るかです。手拍子の強さや速さを増やして解決しようとする必要はありません。
二拍目と四拍目を休んでも数え続ける
次は、一拍目と三拍目だけ手を打ち、二拍目と四拍目は休みます。声は「1、2、3、4」と続けます。打つ、休む、打つ、休む、の四拍です。休んだ拍を数えずに飛ばしてしまうと、三拍目へ早く入ってしまいます。
この練習では、手拍子を二回したことと、四拍を使ったことを分けて確かめます。四拍目を休んだら、次の小節の1でまた打ちます。休みが一小節の終わりにあるときも、次の1までの時間を残しましょう。
慣れてきたら、一小節目は一拍目と三拍目で打ち、二小節目は全部休む形にします。声では「1、2、3、4」を二組数え、三小節目の1から同じ手拍子へ戻ります。これは、一小節休んだ後に入る位置を確かめる独自の練習例です。
戻る場所が分からなくなったら、休む小節を増やさず、最初の「一拍打って一拍休む」形に戻します。全部休む間にもメトロノームは鳴り続けているので、どの音を1としたかをもう一度確かめられます。
半拍の位置は声で二つに分ける
8分音符を読むときは、4分音符の一拍を二つに分けます。クリックに「1、2、3、4」を合わせ、その間に「と」を置いて「1・と・2・と・3・と・4・と」と数えます。クリックの数も、元のテンポの設定も変えません。
初めは、数字のところだけ手を打ちます。次に数字では打たず、「と」のところだけで打ってみます。どちらも一小節に四回打ちますが、後の例ではクリックと手拍子が交互になります。クリックと重ならない音も、拍の中で位置を決めて出せることを確かめる練習です。
「と」へ移ったとたんクリックを待てなくなる場合は、手を止めて八つの声だけに戻します。「と」を次の数字へ近づけたり、反対に前の数字へ寄せたりせず、一拍を二等分して数えます。実際の曲の細かい節や間を、この練習の二等分へ直すという意味ではありません。
習った開放弦や短い一節へ移す
楽器で試すときは、構えと音の出し方をすでに習った課題を選びます。まずは指定された一つの開放弦など、左手の新しい動きを加えずに取り組める範囲にします。手拍子の例を全部一度に移さず、一拍ずつ音を出す形から始めましょう。
常磐津齋櫻氏の教室で紹介されている練習でも、自力で弾ける旋律を選び、遅れる部分を取り出した後に全体へ戻す方法が使われています。曲の音を探すことと拍を保つことが同時に難しいなら、まず選ぶ範囲を小さくします。
たとえば、習った一節の糸を替えるところで毎回止まる場合は、その前後を取り出します。何の糸を鳴らすかが分からないのか、糸は分かるが予定した拍に入れないのかを確かめます。前者なら読譜や動きの確認、後者なら数え方とタイミングの確認へ戻れます。
休符を楽器で演奏するときの余韻や消音は、別に習う内容です。手拍子で打たないことと、三味線の鳴っている音をどう扱うかを同じ動作とは考えず、教材の奏法説明と合わせて確認してください。
テンポを上げる前に同じ条件で比べる
短い範囲を、途中で拍を足したり減らしたりせずに進められるか確かめます。できた場合は、同じ範囲でもう一度試し、次に速度を変えるか判断します。一度最後まで進めたことだけで、すぐに速くする必要はありません。
速度を変えるときは、自分が変えた値を控えます。どの教材でも必ず半分の速さから始める、毎回10ずつ上げるといった決まりにはせず、その範囲を確認できる速さを選びます。速くして止まる箇所が増えたなら、前の値と同じ範囲へ戻して比べましょう。
記録には「課題の箇所、テンポ、拍の単位、気づいたこと」を残します。「60でできた」だけでは一拍の数え方が分かりません。「4分音符を一拍、60、冒頭の一節、二小節目の休みで数え直した」と書けば、次回も同じ条件から始められます。
最後は見本の呼吸と表現へ戻る
メトロノームは、設定した間隔で音を刻みます。曲のどこで間を取り、唄や語りにどう合わせるかまで判断してはくれません。一定の拍を確かめた後は、対応する見本を聴き、稽古で示された入り方や終わり方へ戻ります。
義太夫節の「朱」のように、勘所は記しても、テンポや強弱などを譜面だけでは伝えない記譜もあります。三味線の音楽をすべて一つのテンポで測ろうとせず、今の課題が何を確かめる練習なのかを分けて使いましょう。
休んでも数え続けられるか、決めた拍へ戻れるかが、今回の確認点です。まずは楽器を持たずに一つの例を試し、分かったところから習った一音へ移してみてください。
参考資料
三味線への使い方は、常磐津齋櫻 メトロノームを使っての三味線練習方法を参考にしています。本文の四拍と休みの練習は、その記事の譜例の転載ではなく、基本の音価から作った独自例です。
拍子とテンポの関係はヤマハの拍子記号とテンポ、設定項目の例はMETRONOMEの製品案内を参照しました。義太夫節の記譜と伝承は、日本芸術文化振興会の演奏の基本で確認できます。