← ガイド一覧へ戻る

三味線の各部名称|棹・胴・糸巻・駒の場所と役割

三味線の細長い部分が棹(さお)、箱状の部分が胴(どう)です。上部の糸巻(いとまき)は糸の張りを変え、胴の皮の上にある駒(こま)は糸を支えます。名前を覚えるときは、まずこの四つを楽器のどこにあるかと結び付けると分かりやすくなります。

さらに一本の糸を上から下へ目で追うと、部品どうしの関係も見えてきます。上端では糸巻に巻き取られ、棹の上を通り、胴の上で駒に支えられ、下端の音緒(ねお)に留まります。棹や胴は楽器の大きな部分、糸巻や駒は糸を張って音を出すための部品です。

ここでは、三味線全体に関わる基本的な名称を上部から順に説明します。長唄、地唄、民謡、津軽、義太夫などでは形や仕様が異なるため、すべての楽器が同じ外見になるわけではありません。手元の楽器を分解せずに見比べ、教室や楽器店の説明を理解するための記事です。

天神 糸倉 糸巻はそれぞれ何を指すか

頭部の曲がった木の部分を天神(てんじん)と呼びます。天神の左右の枠の間にある空間が糸倉(いとぐら)で、ここに糸巻で巻き取った糸が収まります。糸倉の下のふくらみは乳袋(ちぶくろ)です。天神という呼び名を乳袋から上の総称として使う説明もあるため、細部については名称だけでなく位置も合わせて確かめます。

糸巻は、頭部の横へ突き出している三本の部品です。それぞれが一本の糸を受け持ち、巻き上げる量を変えて糸の張りを調節します。この調節で音の高さを合わせるのが調弦です。「糸巻」は糸を巻く部品、「糸倉」は巻かれた糸が収まる空間なので、似た名前でも指すものが違います。

糸巻を差し込む穴の金具には、福林(ふくりん)という名前があります。糸巻と福林は別々の部品ですが、糸巻は金具に合うように削って取り付けられます。糸巻が気になるときも、持ち手の部分なのか、穴に入る部分なのか、穴の周りの金具なのかを分けると、状態を伝えやすくなります。

棹と勘所は部品と位置の違い

棹は、三本の糸に沿って伸びる長い部分です。糸が通る側は平らに、背面は丸く仕上げられます。演奏では棹の上で糸を押さえますが、ギターのように押さえる位置を区切るフレットはありません。音の高さを決めるために糸を押さえる位置を、勘所(かんどころ)と呼びます。

勘所は取り付けられた部品ではありません。たとえば「勘所を確かめる」は押さえる位置の話で、「棹の表面を確かめる」は木の状態の話です。同じ場所を見ていても、音を決める位置と楽器の部材を言い分けていると理解すると、説明を読み違えにくくなります。

三つに分かれる棹は三つ折(みつおれ)と呼ばれ、上から上棹(かみざお)、中棹(なかざお)、下棹(しもざお)に分かれます。つなぎ目の部分が継手(つぎて)です。上棹には天神側の部分があり、中央の中棹を経て、下棹が胴へ続きます。継手は組み上げると目立たない場合もあります。

ここでいう中棹(なかざお)は、三分割した中央の部位です。一方、細棹・中棹・太棹と太さで分けるときの中棹は「ちゅうざお」と読みます。中棹の三味線にも中央の中棹がある、という二つの分類が重なります。「どの部分か」と「どの種類か」を区別して読むのがコツです。

棹を分割しない延べ棹(のべざお)の製品もあります。見本の写真に継手があるからといって、手元の楽器も同じ構造とは限りません。分かれる場所を探して引っ張るのではなく、型番や購入時の説明で構造を確認します。

棹と胴の境目にある鳩胸と中木

棹が胴につながる付近で、上面がふくらんだ部分は鳩胸(はとむね)と呼ばれます。長唄などの三味線で見られる形です。鳩胸を付けない地唄式のつくりもあり、民謡や津軽にも使われます。そのため、このふくらみがないことだけを理由に部品の欠損とは判断できません。

下棹から続いて胴の内部を通る木の部分が中木(なかぎ)です。「中子」とも表記されます。胴の下へ突き出して音緒を取り付ける部分を中木先といいます。外から見える棹は胴のところで終わっているように見えますが、構造の説明では胴の中を通る部分まで含めて考えます。

中央の棹を指す「中棹」と、胴の中を通る「中木」も別の言葉です。中棹は上棹と下棹の間、中木は下棹から胴へ続く部分にあります。楽器の説明図では、この位置関係を確かめると混同を防げます。

一の糸 二の糸 三の糸の見分け方

三味線の弦は「糸」とも呼び、太い順に一の糸、二の糸、三の糸といいます。一の糸が最も太く、三の糸が最も細い糸です。写真の左右だけで覚えると、正面から見るか演奏する側から見るかで迷います。まず太さと名前を結び付けると、見る向きが変わっても確認しやすくなります。

三本の糸がすべて同じ素材とは限りません。東京藝術大学が紹介する津軽三味線では、一・二の糸に絹、三の糸にナイロンまたはテトロンを使う例が示されています。これは素材の組み合わせの一例です。「一の糸」という名前は三本の中での呼び分けであり、商品としての太さや素材まで一つに決める名称ではありません。

交換する糸を選ぶときには、一・二・三のどれかに加えて、使っている三味線や用途を確かめます。糸の太さは演奏の目的や棹・胴によっても変わるためです。古い糸の袋や楽器の仕様が残っていれば、部位名だけで尋ねるより具体的な相談ができます。

胴と皮は木の枠と張られた膜

胴は、糸の振動による音を響かせる箱状の部分です。伝統的な木製の胴は四枚の板を組み合わせ、角に丸みのある四角形に作ります。胴の大きさや厚さは用途によって異なります。正面から似た形に見えても、側面を見ると厚みが違う場合があります。

その木の枠に張られた膜が皮(かわ)です。胴は木の枠、皮はその面を覆う材料と分けると、「胴にひびがある」と「皮が破れた」が別の状態だと分かります。皮には動物の皮を使う仕様と、合成皮革を使う仕様があります。素材が違っても、楽器のどの面を指しているかという部位の関係は共通です。

駒はこの皮の上に置かれます。そのため、胴、皮、駒、糸をばらばらの名前として覚えるより、木の枠に皮が張られ、皮の上の駒に糸が載る、と重なりを追う方が理解しやすくなります。胴の木と皮、皮と駒は、それぞれ別の部分です。

駒と上駒は場所も糸との関係も違う

駒は、胴の皮と糸の間に置く小さな部品です。糸を受ける部分に溝があり、文化デジタルライブラリーが紹介する長唄用の駒には三つの糸溝があります。最も大きな溝が一の糸用です。駒そのものは皮に接着されているわけではなく、位置を合わせて使います。

駒は三味線の種類に応じて、高さ、重さ、素材が異なります。津軽の例には竹を使う駒があり、教材用製品にはプラスチックの駒もあります。どれも「駒」という名前ですが、同じ形や寸法の交換部品という意味ではありません。手元の駒を調べるときは、まずどの種類の三味線に使うものかを確かめます。

上駒(かみごま)は、胴の上の駒とは離れた、天神の根元付近にあります。ここでも糸を支えますが、三本すべてが同じように載るとは限りません。たとえば文楽の太棹では、一の糸を上駒に載せず、独特の響きを作ります。「上駒」は楽器の上部、「駒」は胴の皮の上、と場所を区別すると分かりやすくなります。

さわりは独特の響きとその仕組み

さわりは、一の糸が棹側の一部に触れることで生じる独特の響きや、その仕組みを指します。糸がどこにも触れずに振動する状態とは違い、接触する場所を設けて響きを作っています。「さわりがある」という説明は、単に異物が当たって雑音が出るという意味ではありません。

部位の説明では、さわり山やさわり溝という言葉も出てきます。これらは響きに関わる場所の名前です。一の糸自身を弾いたときの響きに加え、ほかの糸を弾いたときに一の糸が共鳴することも説明されています。さわりという音の呼び名と、それを生む部分の呼び名を分けると整理できます。

東さわり(あずまさわり)は、ねじでさわりの高さを変えられる仕組みです。東京藝術大学の津軽三味線の例では、棹の裏側に調節する部分が紹介されています。ただし、どの三味線にも同じねじが付いているわけではありません。ねじの有無は仕組みの違いを知る手がかりで、音の良しあしをそれだけで決めるものではありません。

さわりに似た響きが聞こえても、この説明だけで正常か不調かを判定することはできません。自分でねじや木の部分を調整する前に、使っている楽器の仕様と普段の響きを先生や製作者に確かめます。部位名を知ることと、調整できることは別です。

音緒 胴掛 撥皮と演奏の道具

音緒(ねお)は、胴の下端付近に付く組ひもです。「根緒」とも書き、三本の糸の末端をここに留めます。木の中木先に音緒が付き、その音緒に糸がつながる関係です。下端の状態を伝えるときには、木の部分、組ひも、三本の糸を分けて見ると場所がはっきりします。

胴の上部で腕が触れる側にかかる覆いが胴掛(どうかけ)です。布の柄や色が目立つことがありますが、胴の面に張られた皮とは別のものです。一方、撥皮(ばちかわ)は、撥が当たる範囲の皮を保護するために付けます。胴掛は胴の縁を覆うもの、撥皮は皮の表面に付くもの、と位置で見分けます。

撥皮には半月型や津軽用などの形があり、使う三味線によって貼る位置も異なります。別の種類の写真を見て、同じ位置へ貼り直せばよいとは限りません。交換の相談では、撥皮の形だけでなく楽器全体が分かるようにすると、取り違えを避けやすくなります。

撥(ばち)は糸を弾く道具です。指すりは指掛けとも呼ばれ、左手の滑りをよくして棹の上を移動しやすくするために使います。これらは楽器本体の部位とは分けて覚えます。撥にも素材や形の違いがあり、小唄のように爪弾きを用いる音楽もあるので、三味線の演奏道具がすべて一組に決まるわけではありません。

名前に位置と状態を添えると相談しやすい

部位名が分かったら、「どの部分に、どのような状態があるか」とつなげて伝えます。たとえば「糸巻を差し込む穴の金具」「駒の下の皮」「音緒を取り付ける木の先」のように言うと、似た名前の部品を区別できます。名称を思い出せないときは、楽器全体と気になる部分の写真を用意する方法もあります。

棹と胴、糸巻と金具は、製作時に一つずつ合わせて仕上げる部分です。同じ名前の部品でも、そのまま取り替えられるとは限りません。部位名は、楽器の説明を理解し、適切な相手に相談するために役立ちます。寸法や修理の可否は手元の三味線ごとに確かめます。

参考資料

基本の構造と名称は、文化デジタルライブラリー 楽器図鑑 細棹三味線と文楽 三味線の役割と種類を参照しました。津軽の仕様例は東京藝術大学 アジアの楽器図鑑、細部の名称と仕立ては向山楽器店の部位解説と東京邦楽器商工業協同組合の製作工程で確認できます。