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小唄と端唄の違い|三味線と歌の小さな形式

小唄(こうた)と端唄(はうた)は、どちらも三味線と歌で楽しむ、比較的短い歌曲です。今の江戸小唄は端唄から派生しましたが、歌い方や三味線の弾き方に独自の特徴があります。代表的な違いは、端唄では撥(ばち)を使い、小唄では撥を使わない爪弾き(つまびき)をすることです。

ただし、曲名や演奏時間だけで二つを分けることはできません。同じ曲が両方で扱われる場合もあります。まず成立のつながりを知り、声と三味線の関係、演奏される場を比べてみましょう。

端唄から江戸小唄が育った

江戸の端唄は、日々の出来事、季節の移り変わり、恋する人の気持ちなどを歌う三味線歌曲として広まりました。江戸時代末期には広く親しまれ、明治以後は座敷や寄席(よせ)で演奏されるほか、レコードやラジオを通じても知られるようになります。

「端歌」という言葉は、上方(かみがた)の三味線音楽にも使われてきました。江戸で流行した端唄を指して「江戸端唄」と呼ぶのは、そうした用語の重なりを区別するためです。歴史資料で「はうた」を見かけたら、どの土地と時期の話かも確認すると読み違いを防げます。

現在のジャンルとしての小唄は、幕末に清元節(きよもとぶし)の演奏家たちが端唄に手を加えた音楽から育ちました。清元お葉(きよもとおよう)をはじめとする人々の作曲や演奏が関わっています。単に「短い歌」を意味する古い小歌という言葉と、現在の江戸小唄は、同じ範囲ではありません。

端唄からは、うた沢という別の音楽も派生しました。うた沢はゆったりした歌の運びや低い声を重視します。それに対して小唄は、軽快なテンポと、さらりと歌う表現を育てました。端唄・うた沢・小唄は互いにつながりながら、それぞれの音楽になっています。

撥弾きと爪弾きは音の出し方の違い

端唄の三味線は、撥で弾く演奏を基本とします。小唄の三味線は、撥を持たずに糸を弾く爪弾きです。この違いは、映像の手元からも確かめやすい特徴です。音の大きさだけを頼りにするより、何を使って糸を鳴らしているかを見ると具体的です。

小唄では、やわらかく小さな三味線の音と、声を強く張らずにつぶやくように歌う表現が組み合わされます。静かな響きでも、テンポは軽快です。音量が小さいことと、ゆっくりした音楽であることは分けて捉えます。

端唄は、明快な旋律と規則的な拍が特徴として挙げられます。歌と三味線がどこで重なり、どこで音だけが入るかを追うと、軽快な曲の運びが分かりやすくなります。この傾向を、すべての端唄が同じ速さで演奏されるという決まりにする必要はありません。

楽器の太さだけで小唄と端唄を見分けるのは難しいところです。小唄の楽器は、資料によって「やや大きめの細棹(ほそざお)」とも「中棹(ちゅうざお)」とも説明されています。実際に習う楽器を選ぶときは、分類名に加えて、先生が用いる仕様と奏法を確認します。

歌一人と三味線一人だけとは限らない

小唄は、歌一人と三味線一人という一挺一枚(いっちょういちまい)の編成を基本とします。三味線が二人となり、一人が替手(かえて)を加える演奏もあります。替手は、基本の旋律と組み合わせる別の旋律です。

端唄も、歌う人と三味線を弾く人が分かれた演奏が行われます。三味線二人と歌一人の編成では、二人の三味線が一緒に旋律を弾きながら、一人が替手を入れる形があります。三味線が二人だから端唄、一人だから小唄、と人数だけで決めることはできません。

替手のある演奏では、二挺の三味線がどう重なるかが聴きどころになります。最初は声を追い、次に三味線を追うように注意を移すと、一回で全部を聴き取ろうとせずに済みます。短い曲でも、歌と楽器の組み合わせに変化があります。

同じ曲名が二つのジャンルに現れる

「梅は咲いたか」は、端唄としてよく紹介される曲です。一方、京都市立芸術大学の「上方座敷歌集成」では、端唄であり、流派によっては小唄でもあると説明されています。二つの演奏の紹介欄に同じ曲名があっても、どちらかが間違いとは限りません。

この場合は、曲名と一緒に、端唄か小唄か、誰の演奏か、どの流派かを確かめます。映像があれば撥の有無も手がかりになります。同じ曲名でも、歌い方や三味線の扱いをどう受け継いでいるかに違いがあるためです。

短さも二つを分ける決め手にはなりません。端唄も小唄も短い歌曲であり、演奏時間には曲や演奏の形が関わります。「何分以内なら小唄」という境界を作るより、演奏者が示すジャンルと音楽の特徴を合わせて読むほうが確実です。

短い歌詞の中に季節と人の気持ちが重なる

端唄と小唄には、花や鳥、季節の風景を、人の気持ちと重ねる歌があります。短い言葉の意味を知ってから聴くと、景色を描いているだけに見えた歌が、別の表情を持ちます。

たとえば「梅は咲いたか」は、春の訪れに粋な気分を重ねた歌として解説されています。同じ集成にある小唄「梅に鶯(うめにうぐいす)」は、梅と鶯という取り合わせのよいものを使い、早春を戯れのある内容にした曲です。題材が似ていても、歌が何を表そうとしているかは曲ごとに読みます。

歌詞をすべて現代語へ置き換えてから聴く必要はありません。まず一つの情景や言葉を選び、それが歌のどこに出るかを追ってみてください。次に、その言葉の前後で三味線がどう鳴るかへ注意を移すと、短い曲を繰り返して聴く楽しみが見つかります。

座敷の音楽から舞台で聴く音楽へ

小唄は座敷の演奏と深く関わりますが、大きな劇場やホールでも演奏されます。吉田草紙庵(よしだそうしあん)は、歌舞伎のせりふや下座音楽(げざおんがく)を取り入れた作品を作り、舞台で聴かせる小唄を広げました。会場が大きくなっても爪弾きを保ったことは、小唄の特色を考えるうえで参考になります。

端唄も現在は鑑賞公演で聴けます。日本芸術文化振興会の教材には、2019年の国立劇場公演から「五万石(ごまんごく)・吹寄せ街道(ふきよせかいどう)・正調伊勢音頭(せいちょういせおんど)」の演奏資料が掲載されています。この例には唄、三味線、鳴物(なりもの)の出演者が記されているので、その公演の編成を確かめながら聴けます。

録音を探す場合は、レコード会社の正規案内も入口になります。栄芝(えいしば)と本條秀太郎(ほんじょうひでたろう)のアルバム「芝で生まれて/栄芝の端唄」には、「梅は咲いたか」が収録されています。アルバム名の「端唄」と曲名、演奏者の組み合わせを確認して選べる例です。

まず一曲を選び、歌の内容と、撥で弾くか爪弾きかを確かめてみましょう。その後に同じ曲名の別の演奏へ進むと、名前が似た二つのジャンルのつながりと、それぞれの表現の違いを具体的に聴けます。

参考資料

成立と演奏の基本 日本芸術文化振興会 端唄 うた沢 小唄、日本小唄連盟 小唄とは・小唄Q&A。

曲の扱いと内容 京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター 上方座敷歌集成 あ行の「梅は咲いたか」「梅に鶯」。

正規の録音案内 ビクターエンタテインメント 芝で生まれて 栄芝の端唄。配信先によって利用条件は異なります。