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研精会譜の読み方を学ぶ前に|数字と譜式を確認する

研精会譜は、長唄の唄と三味線を記す縦書きの譜で、「小十郎譜」とも呼ばれます。読み始めるときは、どの数字が唄の節を表し、どの数字が三味線を表すのかを見分けます。そのうえで、数字の意味、調子、糸の指定、拍の区切りを合わせます。

数字は文化譜の勘所番号と同じものではありません。研精会譜では、ドレミにあたる階名を数字で表します。ここでは、実際に凡例を確認できる1924年刊「長唄新稽古本 第2編 吾妻八景」を例に、譜を学ぶ前に読み分けておきたい情報を説明します。現行の各版の細かな記号は、手元の凡例に従ってください。

研精会譜と小十郎譜と書名を結び付ける

研精会譜の別名である小十郎譜は、考案者の吉住小十郎の名に由来します。書店や図書館では「長唄新稽古本」という書名で探せます。お茶の水女子大学図書館の文献案内でも、同書を長唄の唄と三味線の楽譜と説明し、「小十郎譜」「研精会譜」の通称を併記しています。

似た名前に、青柳譜の「唄譜三弦譜付研究稽古本」があります。「新稽古本」と「研究稽古本」を省略して覚えると、別の譜を選びやすくなります。注文や相談では、曲名だけでなく書名、編者、発行元を一緒に伝えると区別できます。

手元の本に版や刷の表示があれば、それも控えます。同じ曲の同じ譜式でも、別の本のページ番号がそのまま通じるとは限りません。先に一冊を特定してから、その本の凡例と本文を往復します。

数字は勘所ではなく階名として読む

長唄三味線奏者の松永鉄九郎さんの解説では、研精会譜の1・2・3はド・レ・ミに対応します。数字の3を見たときの最初の読みは「ミにあたる音」であり、「3の勘所を押さえる」ではありません。

この違いは、三味線を構える前に確かめられます。「数字が3なら、どの糸を押さえるかも決まるか」と考えてみます。数字だけでは決まりません。三味線のどの欄にある数字かを見て、調子や糸の指定などと組み合わせて、弾く位置を確かめます。

また、数字のそばに付く点なども読み取る情報です。小さく見えるからといって省いて書き写すと、元の指定を失います。最初は数字の意味を押さえ、音域や糸を示す印を手元の凡例で順に確認します。未確認の点を、音の長さや奏法の印と決めつけないようにします。

吾妻八景の凡例から唄と三味線の欄を見分ける

国立国会図書館のデジタル資料で見られる「吾妻八景」は、吉住小十郎編の第2編です。奥付には大正13年、1924年2月25日発行とあります。これはここで観察する一冊の発行日であり、研精会譜全体の考案日ではありません。

この本の凡例では、大きく書かれた文句を中心に、その右側の数字で唄の節、左側の譜で三味線の手を示すと説明しています。さらに三味線の譜の左に、口三味線が添えられています。数字が複数の列に見えても、それを全部続けて三味線で弾くわけではありません。

本文の最初には本調子の表示と、三味線・節付の欄の表示があります。出だしを探す段階では、まずこの見出しを確認します。唄の始まる位置と、そこへ至る三味線の部分を、同じものとして扱わないためです。

初めて見るときは、曲を弾き始めず、大きな文句、唄の数字、三味線の数字、口三味線の四つがどこにあるかを指でたどります。この四つの役割が分かるだけでも、「読んでいる列が違う」というつまずきを切り分けられます。

縦に進む譜の中で拍の区切りを探す

同じ凡例は、三味線の譜に引かれた横線を区切りとし、横線から次の横線までを一小節と説明しています。縦に音を追う譜の中で、時間のまとまりを横線で確かめる形です。

ここで必要なのは、音を示す数字と、時間を区切る線を分けて見ることです。文化譜で覚えた「数字の下線」の読み方を、目の前の横線へそのまま当てはめません。この一冊の凡例が、どの線を何と呼んでいるかを先に見ます。

拍を確かめる最初の練習では、一つの小節を選び、その始まりと終わりを指で示します。次に、同じ範囲の三味線の数字と口三味線を探します。すべてを同じ長さで弾こうとせず、長さや休みの記号は、その版の解説と演奏の見本に合わせます。小節の位置が分かることと、細かなリズムを演奏できることは別の段階です。

口三味線を数字へ置き換えて消さない

口三味線は、三味線の音を言葉で表す方法です。音高だけでなく音色や奏法を含むため、数字が読めれば不要になる情報ではありません。「吾妻八景」が三味線の譜の横に口三味線を並べていることも、両方を対応させて使う手がかりになります。

稽古で短い箇所を習ったら、その範囲の数字と口三味線を一緒に見直します。数字では音を追えるのに動きが思い出せない場合は、習った唱え方や演奏の見本へ戻ります。別の流派の口三味線へ一語ずつ置き換えるより、まず使う教材の中で対応をそろえます。

一冊の短い範囲で読む準備を終える

読み始めにそろえるのは、書名と版、曲と調子、唄と三味線の欄、数字の意味、拍の区切りです。手元の一小節について、この五点を言葉で説明できるかを確かめます。まだ分からない印は、数字や列から切り離さず、前後を含めて残します。

たとえば「3の意味が分からない」では、階名、糸、音域、長さのどこで迷っているかが伝わりません。「この版の三味線の欄で、3の右にある印が分からない」とすれば、凡例のどの項目を見るかを絞れます。自分で読めた範囲と、実演で確かめたい範囲を分けるのが、最初の一歩です。

1924年の凡例も、譜を稽古で記憶の助けに使い、予習や復習に役立てることを説明しています。譜面の読解と、人から音楽を習うことを組み合わせる考え方です。手元の現行版で短い見本を確かめながら、数字を実際の声や三味線の音へつないでいきます。

参考資料

譜式名と数字の原則は、松永鉄九郎の三味線のしおり 楽譜。書名と通称の対応は、お茶の水女子大学図書館の日本音楽についての文献案内 近世の長唄の項を参照しました。

実物の確認例は、国立国会図書館の長唄新稽古本 第2編 吾妻八景です。凡例は2〜3コマ、本文の冒頭は3コマ、奥付は11コマで確認できます。現行版の全記号を共通化する資料としては用いていません。