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三味線の勘所とは?譜面の数字と押さえる場所を結ぶ

勘所(かんどころ)は、三味線で糸を押さえる位置です。「ツボ」とも呼ばれます。文化譜の数字は、この位置を読み取るための手掛かりになります。まずは、どの糸を、どの位置で押さえるかを分けて読んでみましょう。

ここでは、三本の横線に勘所の数字を書く文化譜を中心に説明します。数字は指の番号でも、半音を順に数えた通し番号でもありません。この違いが分かると、譜面と楽器のどこを見比べればよいかがはっきりします。

勘所は糸を押さえる場所

三味線の棹には、ギターのように音の位置を区切るフレットがありません。左手で押さえる位置を変えることで音の高さを変えます。そのため、譜面に位置が書いてあっても、指を置くだけで目標の音が自動的に出るわけではありません。位置の目安と、実際に鳴った音を結び付けて覚えていきます。

文化譜の0は、どこも押さえずに鳴らす開放弦です。0を「棹のどこかにある押さえる場所」として探す必要はありません。1以降の数字は押さえる位置を示し、0と区別して読みます。

番号が進む方向を確かめるときは、「棹の先」という言い方だけでは迷いやすくなります。乳袋は棹の上端側にある、ふくらんだ部分です。そのすぐ下にある1の位置から、胴の方へ進むと2、3と続き、音が高くなっていきます。図を見るときも、糸巻き側と胴側の向きを先に確認しましょう。

糸と勘所と指の番号を分ける

横書きの文化譜では、三本の線が糸を示します。上が三の糸、真ん中が二の糸、下が一の糸です。線の上の数字が勘所なので、「どの線にあるか」と「何という数字か」を組み合わせて読みます。

たとえば下の線に2があれば「一の糸の2の勘所」、真ん中の線に2があれば「二の糸の2の勘所」です。同じ2でも、鳴らす糸は違います。先に数字だけ拾うと、糸を取り違えたまま位置を探すことになります。

指の指定は、勘所とは別の情報です。人差し指・中指・薬指をⅠ・Ⅱ・Ⅲで示す教材もあります。勘所の2を、いつでも中指で押さえるという意味には読み替えられません。どの指を使うかは運指の指定を読み、指定が分からない場合は教材の凡例を確かめます。

同じ番号は同じ位置の目安でも音は違う

文化譜では、上駒からの距離が同じ位置を、三本の糸で同じ番号として扱います。一の糸の2と二の糸の2は、棹の長さ方向では同じ位置の目安です。「糸を替えたら、2の場所も別の高さへ移る」と覚える必要はありません。

ただし、同じ場所を押さえても、三本の糸から同じ高さの音が出るとは限りません。もともと開放弦の音の関係を調弦で決めているからです。位置の番号が共通であることと、鳴る音が共通であることを分けて考えましょう。

また、譜面上の位置の対応は、実物のどの糸でも一切確かめずに音が合うという保証ではありません。楽器の状態や駒の位置なども関係するため、目安の線だけで判断せず、見本の音と聴き比べます。押さえ方の細部は、習っている奏法の説明と合わせて確認してください。

番号を一つ増やしても半音とは限らない

文化譜の数字は、音の高さを半音ずつ数えた番号ではありません。たとえば、教育芸術社の教材では1を開放弦から半音上、2を全音上として説明しています。ここだけを見ると一つずつ半音上がるように見えますが、この規則をそのまま全番号へ延ばすことはできません。

別の例を見てみましょう。本調子では、一の糸の4の勘所の音が、二の糸の開放弦に対応します。一の糸をCに合わせた本調子なら、二の糸はFなので、一の糸の4もFに当たります。CからFまでは半音五つ分です。数字の0から4までの差を数えて「半音四つ」と計算すると、違う音になってしまいます。

同じ理由で、途中の音を読みたいときも、数字を一つ足すだけで済ませないようにします。追加の記号や中間の勘所が出てきたら、その譜本の勘所表と凡例を確かめてください。半音や全音は音の隔たり、勘所の数字は位置を表す約束です。役割を分けると、番号と音名を混同しにくくなります。

棹の目印は等間隔の定規ではない

勘所の間隔は、棹の上で均等に並んでいません。高い音の側へ進むほど、間隔は狭くなります。紙の上に等間隔で書いた数字を、そのまま楽器に当てて位置を決めることはできません。

位置を探すための譜尺や目印は、初めに見当を付ける助けになります。ただし、目印の位置と、今の楽器で目標の音が鳴る位置は、音を出して確かめます。教材に棹の継ぎ目を目安にした説明があっても、短い棹などの仕様まで同じと考えないでください。

手元の目印を使う場合は、習っている教材と楽器に対応したものかを確認しましょう。借りている楽器へ新たに貼る前には、所有者に扱いを確かめます。目印の数を増やすことより、今の課題に出てくる位置と音を対応させることから始められます。

短い譜例から位置と音を結び付ける

最初は、習った範囲の中から、同じ糸の開放弦と一つの勘所を選びます。ここでは、すでに2を習っている人が「一の糸の0、一の糸の2」を確認する場合を考えます。新しい押さえ方を、この文章だけで決める練習ではありません。

譜面では、まず下の線にあることを見て一の糸と読み、次に0と2を読みます。0は押さえない音、2は指定された位置の音です。続いて指の指定があれば確認し、習った動きでそれぞれの音を出してみましょう。

見本と比べる前には、基音と調子が同じかを確かめます。本調子という名前が同じでも、出発点の音が違えば、録音と同じ高さにはなりません。開放弦から違って聞こえる場合は、指の位置を動かす前に、合わせる音を見直します。

開放弦は合うのに押さえた音で迷う場合は、糸と数字を読み違えていないか、指の指定があるかを確認します。それでも違いを判断できなければ、使った譜の箇所と見本を残して稽古で確かめましょう。「2が分からない」より「一の糸の0は合うが、次の2が高く聞こえる」と伝える方が、確認する対象を絞れます。

ほかの譜式では記号の意味を確かめる

勘所という考え方は、文化譜だけのものではありません。一方で、三味線の譜の数字がすべて勘所を表すわけでもありません。研精会譜や青柳譜には階名を示す方式があり、文化譜と同じ数字の読み方を当てはめられません。

義太夫節で用いる「朱」という記譜には、勘所をいろはの文字で示す方法があります。ジャンルが変われば、同じ押さえる位置という情報でも、記し方が変わります。新しい譜を読むときは、名称と凡例を確かめてから、音や手の動きに結び付けてください。

文化譜へ戻ったら、「糸の線、勘所の数字、指や奏法の指定」を分けて読みましょう。位置を表す数字と、実際に出た音を一つずつ対応させることが、勘所を覚える出発点になります。

参考資料

文化譜と譜式の違い、勘所図の扱いは、松永鉄九郎 三味線のしおり 唱歌・譜の種類、本調子の音と勘所の対応は同じしおりの調弦法を参照しました。

三本の糸と番号の対応は、Colleen Christina Schmuckal「三味線を用いた現代作品の分析的研究」の本文18ページ、1と2の音の隔たりは教育芸術社の指導者用デジタル教科書 映像資料音声テキスト「P.54 勘所の押さえ方」を確認しました。

位置の向きと間隔、運指の表示例はTORAFUKU 横書き三線譜の読み方、義太夫節の朱は日本芸術文化振興会の演奏の基本を参照しました。