三味線の自宅練習は、今日確かめることを一つ決めると始めやすくなります。「最後の二音で止まらずに弾く」「指定された糸を鳴らす」など、習った課題から選んでみましょう。ここでは、準備、調弦、一音、短い一節、振り返りを組み合わせた10分の例を紹介します。
この配分は、本記事で組んだ復習の一例です。10分が最適という根拠や、上達の保証を示すものではありません。準備や調弦に時間がかかる日は、弾く範囲を減らして使ってください。
練習する範囲と見本を先に決める
教室の宿題や、取り組んでいる教材から、すでに説明を受けた短い範囲を選びます。曲名だけでなく、ページと始め・終わりの位置を決めましょう。見本の音源がある場合は、対応する箇所をすぐ聴けるようにしておきます。
使う譜面と右手の動きは、習っている音楽に合わせます。三味線の譜には、勘所を示すものや階名を示すものがあり、数字をすべて同じ意味では読めません。また、小唄には撥を使わない爪弾きがあります。別ジャンルの動画から、まだ習っていない撥の動きを足す必要はありません。
10分で復習する日の練習メニュー
次の分数は、取り出した楽器と教材が手元にある場合の目安です。楽器を出す時間と、最後に教わった手順で片づける時間は別に見込んでおきましょう。時計の区切りを過ぎても、途中の操作を急いで終える必要はありません。
0分から1分 準備と今日の課題を確認する
教わった手順で演奏の準備を済ませ、構えの見本や前回の注意を確かめます。次に、今日比べる点を一つ決めます。たとえば「糸を替えるところで止まる」という前回の記録があれば、その前後を今日の範囲にしましょう。新しい曲を探すのは、今回の復習を終えてからでも構いません。
1分から3分 課題の指定に合わせて調弦する
教材の調子名と基音を確認します。調子は三本の糸の音の関係、基音はその出発点になる音です。「二上り」などの名前だけで、見本と同じ高さになるとは限りません。先生に習った方法や教材の説明に沿って合わせましょう。
合わせ終えたら、指定された各糸の音をもう一度確かめます。どの音に合わせるか、操作をどう行うかが分からない場合は、ここでいったん止めます。目標音が不明なまま糸巻きを回し続けず、指定を調べる時間に替えてください。
3分から5分 習った一音を聴いて確かめる
最初は、すでに習った糸と音の出し方を一つ選びます。開放弦の課題なら、左手で押さえない指定の糸を使います。見本を聴き、一音鳴らした後は響きに耳を向け、狙った糸を鳴らせたかを確かめましょう。続けざまに回数を重ねる前に、一度ずつ区切って試します。
糸を選べたら、教わった同じ動きでもう一度鳴らします。この時間に音量、速さ、左手の新しい位置まで全部増やす必要はありません。「どの糸か分からない」「同じ動きを試せない」と気づいたら、その確認を今日の課題に替えましょう。
5分から8分 短い一節をつなげる
決めておいた一節の見本を聴いてから、同じ範囲を弾きます。止まったら、その位置に印を付けます。たとえば四音のうち三音目で迷う場合は、二音目から三音目だけを取り出してみましょう。糸、押さえる位置、音の長さのどこで迷ったかを確かめます。
取り出した二音がつながったら、前後の音を戻して一節を弾きます。毎回曲の最初まで戻らず、今日選んだ範囲で試してください。まだつながらない場合は、その二音を次回の出発点にして構いません。
8分から10分 聴き返して次の課題を残す
録音できる場合は、練習した一節を一度残し、見本の同じ箇所と比べます。聴く点は「音の高さ」か「音を出すタイミング」など一つに絞りましょう。録音だけで構えや指の動きまで正しいと判断せず、聞き取れた違いを書き留めます。
記録は「練習した範囲」「分かったこと」「次にすること」の三つで十分です。たとえば「冒頭の四音/三音目で止まる/次は二音目からつなぐ」と残せます。録音の準備が間に合わなければ、今日気づいたことを一行書いて終えましょう。
音程やリズムで迷ったら配分を変える
見本と音の高さが違うと感じたら、短い一節の練習を止め、同じ調子・基音・糸を使っているかを確認します。開放弦も違って聞こえる場合は、押さえる位置を動かす前に調弦を見直しましょう。開放弦は合っているのに押さえた音で迷う場合は、譜面の糸と位置を確かめます。聞き分けられなければ、その箇所を記録して次の稽古で確認してください。
音の長さや入るタイミングで迷う場合は、楽器をいったん置き、同じ一節を聴き直します。拍を数える課題なら、教わった数え方で休みも含めて数えてみましょう。拍の数え方自体が分からなければ、その位置をメモします。見本に間や速さの変化がある場合は、自己判断で等間隔にそろえず、教材の説明を確かめてください。
準備だけで終わる日にも続きを残す
準備や調弦で時間を使い切った日は、残りの項目を詰め込まず、「どこまでできたか」を記録して片づけます。毎回同じ準備で止まるなら、その操作を次の稽古で見てもらう課題にできます。取り出しから片づけまで含めて10分しかない日は、一音の確認だけにするなど、先に内容を減らしましょう。
楽器がない日や音を出せない日は、短い見本を聴いて譜面の同じ範囲を目で追う方法があります。音の始まりや休みを探し、読めなかった記号を一つ控えます。口三味線を習っている人は、習った唱え方で同じ一節を復習してもよいでしょう。
次に楽器を出したら、残した一行を見て、同じ範囲から始めます。全部の項目を終えることより、今日確かめる点と次にすることを決めておくと、短い時間でも取り組む内容がはっきりします。
参考資料
学び始める順序はのすけ会「初心者ガイド」、教則本が扱う基礎の例はヤマハ「久保木脩一朗の津軽三味線教本」の出版社案内を参照しています。
調子と基音、譜面と口三味線は、松永鉄九郎氏の「三味線のしおり」にある調弦法と唱歌・譜の種類を参考にしています。
小唄の爪弾きは、日本芸術文化振興会の「端唄・うた沢・小唄」で解説されています。